遺書
夢を見ていた。
それには綺麗な人や萌ゆる愛、そういうものがあった。
つらい事も酷い人も勿論あったけれど、それに勝るくらいの夢が僕にはあった。
月に行けると錯覚した。青い地下も赤い空も思うが儘だ。
本当は物質的に君を抱きしめたかったけれど、時間が来た。
いつか看守がしらせたモザンビークは存在しなかったみたいだ。
でも、そんなこと最初から知っていた。
この声が始まってから今 雷うつ曇天まで、それは繋がっているんだから。
僕は歓喜している、僕はこれからどこへいくんだろう?
あの部屋じゃなきゃいいな。楽しいことがたくさんあればいいと思う。
後悔は好きじゃないから、君を愛しているって伝えたい。
美しい夢の終わりには 枯れた薔薇が一本だけ刺さっている。
(2023/8/1 加筆・修正)
lovers
都会の方へ出てきて結構経った。
狭い路地をふらふらになって歩きながら、よく地元を思い出す。
俺が育った街は本当に何もなかった。住宅街に畑、夜の自販機、週末のホビーオフ、売人、ヤンキー。そういうところ。
俺は地元が好きじゃなかったし、友達と集まってパーティくらいしかやることがなかったからつまらなかった。
俺にとってはそれが世界の全てで目で捉えられるものが愛してあげられる選択だった。
今もそうだけど。今と違って限りなく小さいものだったから大体のことに愛を持って接せていたはずだ。友達も、ネットの友も、駅も近所のスーパーも、仲の悪い親も、音楽も、君のことも。
引っ越した当初は都会の人はなんて愛がないんだと思った。地元に帰りたいとか、茜色の夕日みたいなことを思った。
でも特別都会の人間に愛情がないわけじゃない。田舎の人間ははっきし言って情に馬鹿なだけだ。物事が飽和して、わかんないから許せるだけ。
揉め事が嫌なだけで愛なんかなかった。悲しくなるけど、今となってはそんなことどうでもいい。
外へ出て自分が異常なんだってようやく気づいた。
全てを愛そうとして、受けとめきれなくなって、いつも死にたくなっていた。
もう助けてとヘルプを飛ばすことすらできなくなって、押し潰されて、だからもう私は疲れてしまった。
だから生まれて初めて諦めることをここに宣言しようと思う。
何事も譲らず頑固に生きてきた、でももう疲れてしまった。精神を病んでしまった。燃え尽きてしまった。
誰のせいでもなく、人とコミュニケーションが取れないという結果なんだろうと今は受け止めている。
自分は優しいと嘯き、人を傷け、愛し合えなかった。関わった人全てに迷惑をかけてごめんなさいと言って回りたい。
今となっては何にもない地元をそれが良かったと思う。僕に必要なものは、大切な人を愛せられるだけの少しの金と、自慰と、かっこいい音楽。それだけでよかった。
何も要らなかった。
何もなかった。
そう思いたい。
今はもう、自分の全てを伝えることが、どうしようもなく怖くなってしまった。愛しているよと貴方に伝えて、自分の望まない通知が跳ね返ってくることが本当に怖い。
だからせめて、俺は誰かに触れてたいだけだ、
嘘じゃない。
無理だろうけれど、信じて欲しいだけだ
でも嘘じゃない。
嘘じゃない。
(2023/8/1 加筆・修正)